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広島地方裁判所 平成4年(わ)348号 判決 1992年12月25日

本籍

広島市中区昭和町六三八番地

住居

同市西区井口台二丁目三番二六号

会社役員

木村靖弘

昭和一八年四月一六日生

右の者に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官川見裕之出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役二年六月に処する。

この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、不動産の売買、賃貸、仲介、管理等を目的とする株式会社ダイホウの代表取締役であるが、

第一  広島市中区東白島町一七番一八号所在の不動産の売買等を目的とする東邦ビルド株式会社の代表取締役中森律美及び能力開発等の研修会の企画・立案等を目的とする株式会社総合クリエイティブの代表取締役京免秀昌らと共謀のうえ、東邦ビルド株式会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、同会社がその所有する土地を売却するに際し、同会社と真実の買受人との間に、右株式会社総合クリエイティブが買受人・売渡人として介在しているように仮装するとともに、真実の買受人から受領する売買代金をも圧縮した内容虚偽の売買契約書を作成して売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、東邦ビルド株式会社の平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際所得金額が一八億五、〇一八万九、一二〇円で、課税土地譲渡利益金額が二五億八、〇二九万四、〇〇〇円であったのにかかわらず、平成三年二月二八日、同区上八丁堀三番一九号所在の所轄広島東税務署において、同税務署長に対し、同事業年度における所得金額が三、九八三万〇、二五一円で、課税土地譲渡利益金額が七億五、三二九万六、〇〇〇円であり、これに対する法人税額が二億三、〇〇四万七、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同事業年度分の正規の法人税額一五億〇、二二九万〇、三〇〇円と右申告額との差額一二億七、二二四万三、〇〇〇円を免れ

第二  広島市中区本川町二丁目二番一三号に本店を置き、不動産の売買等を目的とする株式会社築地の取締役兼実質経営者平尾泰保及び前記京免秀昌らと共謀のうえ、株式会社築地の業務に関し、法人税を免れようと企て、同会社がその所有する土地を売却するに際し、同会社と真実の買受人との間に前記株式会社総合クリエイティブが買受人・売渡人として介在しているように仮装して売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、株式会社築地の平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの事業年度における実際所得金額が四億六、八三五万七、六四九円で課税土地譲渡利益金額が三億二、二三四万二、〇〇〇円であったのにかかわらず、同年五月三一日、同市西区観音新町一丁目一七番三号所在の所轄広島西税務署において、同税務署長に対し、同事業年度における所得金額が三億一、〇二二万二、六四九円で、課税土地譲渡利益金額が一億七、〇一三万三、〇〇〇円であり、これに対する法人税額が一億六、五二一万五、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同事業年度分の正規の法人税額二億七、〇一七万八、四〇〇円と右申告額との差額一億〇、四九六万三、四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書五通(検199、200、204、205、206号)

一  平尾泰保の検察官に対する供述調書謄本八通(検125、126、128、132、134、135、136、149号)

一  京免秀昌の検察官に対する供述調書謄本一〇通(検152ないし160、165号)

一  小林實の検察官に対する供述調書謄本九通(検168、173、175ないし178、186ないし188号)

一  登記簿謄本(検190号)

判事第一の事実について

一  被告人の検察官に対する供述調書三通(検198、201、207号)

一  中森律美(検112、113、114、115号)、平尾泰保(検129ないし131、133、137号)、京免秀昌(検161号)及び小林實(検167、169ないし172、174号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  野田良次(検19、20号)、伊藤俊司(検21、22号)、原井敏明(検23、24号)、森分恒(検25ないし28号)及び大畠茂(検29ないし31号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  岡義人(検32号)、石井勝哉(検33号)、倉本節彦(検34号)、中本正成(検35号)、大原吉男(検36号)、山本ユキ子(検37号)、松田潤(検38号)、金丸茂雄(検39号)、藤山安朗(検40号)、及び坂本あつ子(検47号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  大蔵事務官作成の調査事績報告書謄本(検2、3、6号)、受取利息調査書謄本(検4号)、雑収入調査書謄本(検5号)及び土地譲渡利益金額調査書謄本(検7号)

一  検察事務官作成の捜査状況報告書(検8号)

一  登記簿謄本(検189号)

判事第二の事実について

一  被告人の検察官に対する供述調書二通(検202、203号)

一  平尾泰保(検141ないし148号)、京免秀昌(検162ないし164号)及び小林實(検181ないし185号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  前田柾寛(検58、59号)、土鼻隆司(検60号)、北山俊文(検61号)、村上一二(検62号)、高嵜恭子(検63号)、神田大作(検64号)、児玉利雄(検65、66号)、池田邦彦(検67号)、伊折一夫(検68号)、橋本小夜子(検69号)、中曽崇(検73ないし76号)及び平尾雅治(検77号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  細谷眞智子(検78子)、舛田美恵子(検79号)及び竹永靖正(検80号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  大蔵事務官作成の告発書謄本(検9号)、販売手数料調査書謄本(検10号)、雑損失調査書謄本(検11号)及び土地譲渡利益金額調査書謄本(検12号)

一  検察事務官作成の捜査状況報告書(検13号)

(法令の適用)

一  罰条(判示各行為)

刑法六五条一項、六〇条、法人税法一五九条一項

二  刑種の選択

いずれも懲役刑を選択

三  併合罪の処理

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第一の罪の刑に加重)

四  執行猶予

刑法二五条一項

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 野島秀夫)

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